ー通常の治療でアトピー性皮膚炎の大半はよくなりますー
1. 軽症(~中等症)の場合
保湿剤に加えて,弱めの外用薬を使います。
ポイント1 入浴後はすぐに保湿剤と外用薬を塗りましょう!
入浴により皮膚は潤い(うるおい)ますが,時間経過とともに皮膚の水分量は減少します。保湿剤の効果は,入浴から早く塗るほど高いことがわかっています。入浴後5?10分以内に保湿剤(広めに)と外用薬(部分的に)を塗って,水分を閉じ込めることが大切です。
ポイント2 弱めの外用剤では改善が乏しい場合
やや強めの外用剤を使用して全身の皮膚をきれいにした後、弱めの外用薬に戻します(重症の場合と同様の治療パターン)。
ポイント3 弱めの外用剤では改善が乏しい場合
やや強めの外用剤を塗ると劇的によくなり、外用量もわずかですむ場合があります。この場合には、やや強めの外用剤を続けます。
ポイント4 広範囲に軽い皮膚炎が生じてしまう場合
弱めの外用薬をさらに薄めたものを,保湿剤代わりに使用します。
2. 重症(~中等症)の場合
ガツン!と叩いてしょんぼりさせ、
その後も舐めた真似はできないことを思い知らせる。
- 最初は強めに治療して、全身の皮膚をできるだけきれいにします。こじれて治りにくくなった病変もできるだけ治します。
よくならないケースの多くは、この初期治療が不十分あるいはまったく行われていません。「通常の治療でアトピー性皮膚炎の大半はよくなる」と言われるのに、多くの患者さまで治療効果が不十分な原因は、ここにあると思われます。 - 十分に症状が落ち着いた時点で,治療を弱め始めます。
- 一時的に悪化しかけることもありますが,しっかり外用して症状を抑えます。
- 大部分の患者さまでは,1?2か月間良い状態を保つと病気の勢いが弱くなり,気楽にスキンケア(保湿剤と外用薬)を続けていれば,好調を維持できます(安定期)。
★ 1.の「強めに治療して、できるだけきれいにする」方法には、いくつかのパターンがあります。
ⅰ)使用中の外用薬を多め・広めに塗る。
適切な外用薬を処方されていても,使用量が少なすぎる場合があります。この場合には,多め・広めに塗ることにより,劇的に症状が改善します。
ⅱ)強めの外用剤を使用する。
1~2番目の強さの外用薬を使用します。「できるだけきれいにする」段階ですので,やはり多め・広めに塗ることが大切です。
ⅲ)最少量のステロイド内服薬を併用する。
高度な皮膚炎が広範囲に認められる場合に限り,最少量のステロイド内服薬を併用することがあります。1週間以内に減量を開始し,1?4週間程度で中止します。
ポイント5 外用薬は薄く塗らない。
「薄く塗るのだけが間違い」とお話ししています。多く塗りすぎても製剤ごとの強さしか効きませんが,薄く塗ると効果が落ちてしまい,しかもどの程度効いているかもわからないからです。
ポイント6 外用薬は肌をしっとりさせるように塗る。
外用薬を塗る量については,ポイント5の「薄くは塗らない」ことに加えて,「しっとりさせるつもりで塗って下さい。塗ったかどうかわからない程度では,少なすぎます」とお話ししています。
また,FTU(finger-tip unit)といった目安も提唱されています。詳しくはコチラ
ポイント7 皮膚症状のソフトランディング
強めの初期治療で症状を十分に抑えると述べました。しかし、表の のように、目標よりもよくなり過ぎてしまって、治療を弱めるとともに悪化するというのはお勧めできません。「やはり良くならないんだ‥」といった感情が生じて、治療意欲が失われるからです。
当院では、治療前から目標とすべき皮膚症状を推定して、早期に穏やかに目標にたどり着き、治療を弱めても明確な悪化は生じないことを目指しています。