1.イボとは
パポバウイルスが皮膚に住み着いて増殖し,また皮膚の細胞をも増殖させます。
有効な薬剤がないため,さまざまな治療が試みられていますが,痛くなくて劇的に効く方法はまだ見つかっていません。
イボを断面図で見ると,くさび様にあしが伸びています(図1)。このことが治りにくいことと大きく関係します。
2. イボが治りにくい理由
例えば,液体窒素による凍結療法を行ってみます(図2)。
残念ながら凍結してもウイルスは死滅しませんが,周囲組織が障害され内出血(血マメ)や水疱となります(図3,4)。
3〜4週間のちに,血マメとともにイボは剥がれ落ちるのですが,図4のようにわずかでも残ってしまうと,いずれ(数日〜数か月後に)再発します。肉眼的には治っているのに,再発してしまうという現象です。
他の治療法でもこの問題点は何ら変わりません。
3. イボの治療方法(当院の治療方針)
原則としては,液体窒素による凍結療法を行います。治療中や治療後の痛み,水疱形成による日常生活への影響が欠点ですが,もっとも確実で早く治る治療法と考えられているからです。
① 液体窒素による凍結療法
ⅰ)通常の治療方法
凍結する部分については,十分に長時間の凍結を行い,完全に脱落させることを目指します。中途半端なダメージを与えてもイボは脱落しませんので,「痛い損」になります。一部分だけでもよいので,十分に凍結することが大切と考えています。
ⅱ)イボが非常に多いか大きい場合の治療方法
この場合には,確実にダメージを与えるまで凍結していく方法は困難です(激痛に次ぐ激痛を伴います)。実は,凍結療法の開始後に未治療部まで一斉に治ってしまうことがあります。イボが非常に多いか大きい場合には,この現象に期待して,敢えて軽めの治療を繰り返してみます。
免疫調整作用があるとされるヨクイニンやシメチジンの併用も考慮します。
② グルタルアルデヒド塗布療法
ⅰ)グルタルアルデヒドとは
グルタルアルデヒドは約10年前までは,定番の医療器具用滅菌・消毒剤でした。しかし,近年ではシックハウス症候群様やアレルギー様の副作用が生じ得ることから,滅菌・消毒剤としては発売されなくなりました。
このグルタルアルデヒドには,組織変性作用やウイルス死滅作用があるため,イボ治療に国内外で利用されています。
ⅱ)グルタルアルデヒド塗布療法の実際
グルタルアルデヒドをイボに塗布すると,イボ組織が変性し、茶色く変色します(日本皮膚科学会ホームページの写真(資料17)をご参照ください)。変色した組織は,小さい金属スプーン等で軽く削り取ります(が,通常はあまり取れません‥)。
自宅では,これを1日1回行います。
当院への通院は7〜10日ごとで,グラインダー(図5)で削った後に,グルタルアルデヒドを塗布します。
ⅲ)グルタルアルデヒド塗布療法を行うかどうか?
イボが茶色く変色して,治療前よりも目立ってしまうことを考慮して,この方法で治療するかどうかをお決め下さい。
また,グルタルアルデヒドが目や口に入ること,イボ以外の皮膚に付着することは絶対に避けなければいけません。これが守れない小さいお子様では治療はできません。