−膠原病の皮膚症状について−
膠原病は患者数の多い病気ではありませんが,私の専門である(あった※)ため,触れさせていただきます。
※現在は,アトピー性皮膚炎,フットケア,創傷やとこずれ,紫外線療法などにも注力しています。
① 膠原病とは? ‥「リウマチのようなもの??」
発熱や発疹,関節痛に加えて,腎病変や肺病変などの似た症状を起こし得る一群の病気です。腫瘍(癌など)や菌の感染ではない炎症性の病気で,慢性に経過します(数年〜数十年の治療期間)。免疫の異常があり、血液検査にて自己抗体が検出されます(本来は外敵に反応する免疫システムが,自己にも反応します)。
「リウマチのようなもの」と説明されることがありますが,関節リウマチの患者さまの大半は関節以外の症状に乏しいため,不適切と思われます‥。
②抗核抗体とは?
自身の細胞の核に対する抗体です。
健康な成人の約10%にしか認められませんが,膠原病の患者さまでは抗核抗体の検出率が高くなります(病気により30〜100%)。
抗核抗体には多くの種類がありますが,一部の抗核抗体では特定の膠原病や症状を生じる割合が高くなります。
以上から,膠原病が疑われる際には,抗核抗体の検査が診断のために非常に重要です。
しかし,抗核抗体を測定するには,少しだけコツがあります。
抗核抗体の検査は,膠原病に詳しい医師に依頼するのがよいでしょう。
③膠原病の皮膚症状
全身性エリテマトーデス(蝶形紅斑,急性期)
蝶の羽のように両頬に拡がるため,蝶形紅斑と呼ばれます。
全身性エリテマトーデス(慢性期)
同じ病気ですが,落ち着いた時期に現れる発疹です。
皮膚筋炎(顔の紅斑)
蝶形紅斑と似ていますが,別の病気です。
皮膚筋炎(手指の紅斑)
ゴットロン徴候と呼ばれる有名な発疹ですが,全身性エリテマトーデスでも同様の発疹を認めることがあります。
全身性強皮症(皮膚の硬化)
皮膚が硬くなって,つまみにくくなっています。
全身性強皮症(レイノー現象)
指の末端のみが,発作的に白くなっています。抗核抗体と並んで,膠原病を発見する契機となり得る重要な所見です。
全身性強皮症(毛細血管拡張)
全身性強皮症では毛細血管が拡張して,赤いホクロのように見えます。
全身性強皮症(↓ あまかわの延長)(↓ 爪上皮の内出血点)
爪のあまかわの延長(↓,全身性強皮症)と内出血点(↓,皮膚筋炎,全身性強皮症)は,地味ながら重要な所見です。
写真からわかるように、主に手(特に爪囲や指)や顔に赤い発疹が現れ,何週間も続きます。多くの場合はかゆみを伴いません。これらの所見は、軽症の膠原病を診断する際には特に重要で、内科や膠原病科では診断に至っていない患者さまでも確定診断にたどりつく可能性があります。
当院でも数名の膠原病の患者さまが通院されていますが、大部分は別の問題で来られた際に、手や顔を見せていただいて診断に至りました。
最後に
膠原病の診断には,抗核抗体の検査(測り漏らしがないように)と皮膚症状が非常に重要です。膠原病かもしれないと言われたら、膠原病を積極的に診療している皮膚科にも受診されるといいでしょう。